数日後。
「なあ、岡崎」
休憩時間に入った途端、春原が朋也に声をかける。
「なんだ」
「いや、杏のことなんだけどさ」
「杏? あいつがどうかしたのか」
朋也はそう答えつつも、春原が何を言いたいのか大方察しがついていた。
「いや、何ていうかさ、あいつ最近、妙に大人しいっつーか、真面目になったっつーか。とにかく、何かおかしくないか」
「……ああ、それは俺も思ってた」
何かあった。それは間違いない。
ここ数日、杏は明らかに様子が違っていた。
いつものように春原に暴力を振るうこともないし、スクーターで登校する様子も見かけない。恐らく、毎日真面目に歩いて登校しているのだろう。
それ以前に、春原の言う通り、話していてもどこか妙に「大人しい」のだ。それほど露骨なものでもないが、ある程度付き合いがあればわかる。
あの日。幸村にスクーター登校がみつかった翌日からだ。
やはり幸村に目をつけられていて、案の定見つかってしまったのだろうか。忠告してやるべきだったか。しかしそうだとすると、普通に登校しているのは妙な話だ。二日続けてのスクーター登校なら、停学は確実だろう。
(いや、でも、あの爺さんもよくわからんからなあ)
何か特殊なやり方で杏を矯正したのかもしれない。あの杏を大人しくさせるような、何かで。
(……そんなのあるか?)
考えていると、また春原が話し出す。
「いやさ、実際のところ、僕には大体検討がついてるんだよね」
「……一応、話してみろ」
自信満々な話しぶりに不安を覚えつつも、続きを促す。
「見てて気づいたんだけど、あいつ、最近いっつもそわそわもじもじしてて、とにかく落ち着きがないんだよね。で、たまにさ、自分の尻を押さえるんだよ。『もう耐えられない!』みたいな感じでさ」
こいつ、そんなところまでチェックしてるのか。
朋也は春原の言動に既に引き気味であったが、全くに気にせず、むしろ得意げに春原は続ける。
「まあ、ここまで言えば岡崎でもわかるかな。僕は気づいちゃったんだよ。
そう、あいつはここ数日――げりぇあえおっ!!」
春原が椅子ごと後ろにひっくり返る。バサッと音がした方を見ると、床に転がっているのは国語辞典。
教室の入り口に、杏が立っていた。
「あたしが、どうしたって」
早足で教室の中にずんずん進んでくる。恐ろしいことに、笑顔だ。
その声音に危険を察知したのか、春原は倒れたまま息も絶え絶えに答える。
「い、いえ、何でもありません」
「そう。ならいいんだけど。あんまり妙なことを、大きな声で話さないでもらえる」
「はい。肝に銘じておきます……」
そして春原は沈黙した。 数日振りだから余計に効いたのか、しばらくは起きそうにない。
「よお、元気になったのか」
「は、はあ? あたしはいつも元気だけど」
「そうか。最近そう見えなかったからな。春原もあんな感じだけど、心配してたと思うぞ」
「よけいなお世話よ。何でもないから」
そう気まずそうに言って、足早に去っていった。
明らかに何でもなくはない様子だが、あまり触れられたくないようなので朋也は何も言わずに見送った。
(幸村の爺さん、いったい何したんだ)
朋也の疑問は膨らむ一方だった。
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それから更に数日。
杏はすっかり元の調子に戻っていた。
確かにあの日から数日間は反省しきりであった。
椅子に座るたびにずきずきと、あの時の光景が思い出され、辛く情けない気持ちになった。そしてそれ以上に、深い後悔の念があったのだ。自分の行いが如何に浅はかで、卑怯なものであったのか。消えない痛みが、それを強制的に考えさせる。
それに、あんな目に遭うのは二度と御免だ、という気持ちももちろんあった。
しかし、時の流れが、それらをいとも簡単に消し去った。
尻は治り、痛みは消え、辛い思い出は薄れ、反省の気持ちも徐々になくなっていった。
そして今朝は久々の寝坊だ。緊張感が薄れたせいか、いつもより余計に眠ってしまったようだ。
(やばい)
すぐに着替えて支度を済ませるが、最早どう考えても徒歩では間に合わない。走ったとしても厳しいだろう。
遅刻確定か、と一度諦めかけたが。
(あ……)
ほんの数日前ならばありえない選択肢。しかし、今となってはそれを咎める痛みも、消え失せていた。
数秒の葛藤の末、杏は誘惑に負けた。
とは言え気にしないわけではない。スクーターを走らせながら、杏は考えた。そして空いた時間を限界まで使って、今までよりも更に安全な、駐輪場ですらない茂みの奥に証拠を隠しておいた。それからは徒歩で、他の生徒達に紛れ込む。何食わぬ顔で校門を通過する。完璧だった。
「おはようございます」
幸村の姿がみえた。いつも通り、挨拶をする。
「ああ、おはよう」
そしてそのまま通り過ぎる。
校舎に入り、靴を履き替え、教室に向かう。
……何も言ってこない。
気づいていない。
流石にばれていないだろうと思いつつも不安でいっぱいだった杏は、教室に着くなり大きなため息をついた。地雷原を歩いて通り抜けたような気分だ。
通学のたびにこんな気持ちになっていたら、いつか心臓が破裂してしまう。やはり、スクーターはなるべく使わないようにしよう。
そんな事を考えつつ真面目に授業を受け、その日は何事もなく放課後となった。
帰りもなるべく人に見られないよう、他の生徒よりも少し時間を遅らせた。
窓から様子を伺い、幸村が校門からどこかに移動したタイミングを狙って教室を出る。
「よお、杏」
廊下を歩いていると、背後から声をかけられた。一瞬驚いたが、すぐに声で気づいた。
「あら、陽平。朋也は一緒じゃないの」
「ああ、あいつならまだ寝てるよ。まあ、今日は僕もちょっと用事があって忙しいからさ。むしろ好都合だよ」
「へえ。そうなんだ。じゃあね」
「ちょっと! 何の用事か聞かないの」
杏にはそんな話を聞いている暇はない。幸村がいない今のうちに、素早く帰らなければならないのだから。無視して歩き続ける。
「あ、そういえばさ!」
少し離れた位置から春原の声が聞こえる。
「スクーター通学、やめた方がいいんじゃないの。ばれたら停学じゃ」
「でかい声で言ってんじゃないわよ!」
一喝すると、春原はすぐに逃げていった。
どうやら今朝、見られていたようだ。相手が春原で助かった。もしそれが幸村だったらどうなっていたことか。
少しヒヤリとしつつも、特に問題なく校舎を出られた。
そのまま行きと同じ道を歩き、スクーターを停めてあった場所までたどり着く。
(やっとここまで……ほんと、生きた心地がしない)
ここまでくれば完全に教師のチェック範囲外だ。まして幸村のような老人が、こんな所まで見回りに来ているはずがない。
スクーターを引っ張り出し、鍵を挿す。後は遠回りに帰るだけだ。
「ずいぶん、遠くに停めたもんだ」
突然、背後から声が聞こえた。
びくり、と反応し、心臓の鼓動がどんどん大きくなる。
この声は、一番聞きたくなかった声だ。
確かな絶望を感じながら、ゆっくりと振り返る。
「先生……なんで」
「うむ、そろそろ、もしかしたらと思ってな。疑っておいて何だが、正直がっかりしとるよ」
幸村はいつもの柔和な表情をわずかに曇らせ、ゆっくりと話す。
「どうも、この間のでは罰が足りんかったらしいな。しかし、まあ、それはわしの落ち度でもある。
もう一度、今度は徹底的に叩き込んでやる。さあ、来なさい」
「そ、そんな……」
もう、何も考えられなかった。
幸村に手を引かれて校舎に逆戻りして生徒指導室に入るまで、杏は顔面を蒼白にして、俯いていた。
「さあ、これから自分が何をされるか、わかっているな」
部屋に入り、戸を閉める。
幸村の口調はいつになく厳しい。すでに泣きそうな顔の杏は、黙って頷くしかなかった。
「ならさっさとこっちに来なさい」
幸村が部屋の中に進む。杏も、とぼとぼと歩みを進める。
「そこに手をつくんだ」
中央辺りに設置された長机を指差す。杏は言われたとおり、両手を机の上に乗せる。
机は腰ほどの高さなので、両手をつくと少し前かがみになった。
「さて、始めるぞ……ああ、その前に、下は全部脱いでおきなさい」
「へ?」
思わず声が出た。下を全部。一瞬考え、すぐに理解した。
前回後半の地獄のような痛みが、初めからずっと続く。そういう意味だ。
それに、手をついて下着まで完全に脱いでしまえば、なにも隠すことができない。文字通り、何もかも丸見えになってしまう。年頃の杏にとって、とても耐えられることではない。
「ど、どうして」
この間のように膝の上で、下着をずり下げるような形ではないのか。そう聞こうとした。
しかし言葉を出し切る前に、幸村が答える。
「言ったじゃろ。今度は徹底的に躾ける、と。
さ、それ以上は説明するより体感したほうが早い。早く脱ぎなさい」
言うと同時に、尻を引っ叩く。いきなりの痛みに、小さな声が漏れる。
「ほれさっさとせんか。今日は200回。終わるまで帰さんからな」
「そんな!」
幸村の言葉に、杏の顔が強張る。
200回。前回の倍の数だ。
前回でさえ、限界は超えていた。倍なんて耐えられるはずがない。
流石に抗議しようとするが、それを遮るかのように続けて2発、鋭い痛みが走る。
「ひっ」
「言っておくが、これは数に入らんからな。自分で脱げんのなら、服が擦り切れるまで叩いてやろうか」
更に3発。一つ一つの衝撃が、心なしか前回よりも大きく感じる。
責め立てるような口調は、いつもの幸村からはとても想像できない。
杏はその時になってようやく気づいた。幸村は、怒っているのだ。
「ご、ごめんなさい。すぐ脱ぎます。だからやめて」
「はようそう言わんか」
幸村の手が止まる。
急いで靴と靴下を脱ぐ。早くも杏の目からは、涙がこぼれ始めた。
しかし、ぐずぐずしていられない。恥ずかしさを押し殺して、自らスカートに手をかける。
スカートを床に落とすと、白い下着が露になった。これも、自分で脱がなければならない。
顔が赤くなっているのがはっきりとわかった。前回のように人に脱がされるのとは、わけが違った。
それでも、もう逃げ場はない。すぐに覚悟を決めた杏は、一気に下着を脱ぎ去った。
「それでいい。さあ、これから仕置きを始めるが、何か言うことはないか」
「……はい、先生、すみませんでした。お仕置をお願いします」
「うむ、素直でよろしい。だが、だからといって手を抜くつもりはないぞ」
その直後、生徒指導室から乾いた音が響き渡った。
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――目が覚めた。外を見ると、既に夕日が落ちかけていた。
「もう、こんな時間か」
教室には、朋也以外誰もいない。
「春原のやつ、帰るんなら起こしてからにしろよ」
愚痴りつつ、鞄を手にして教室を出る。
廊下を歩いていても、人の姿が見当たらない。もう、部活も終わっている時間だ。
もし教師にみつかったら、「こんな時間まで何をしていた」と咎められるだろう。素行不良で目をつけられている朋也ならなおさら、厳しい追求は避けられない。
仕方がないので、さっさと帰ることにした。といっても向かう場所はいつものように春原の部屋だが。
(……いや、そういえば、あいつ用事があるとか言ってたな。じゃあ、寮に行っても留守か)
珍しくナンパが成功したとか、そんな話だったような気がする。
その時既に眠りかけていたのでろくに聞いていなかったが、本当に珍しいことなので、なんとなく覚えていたらしい。
(この辺りに住んでいてあいつの悪評を聞いてないような子が、まだいたとはな……ん?)
不意に立ち止まる。
遠くから、何か聞こえる。
歩みを進めると、次第にはっきり聞こえてくる。女の子が、泣き叫ぶ声だ。
(おいおい、学校で一体なにやってんだよ)
この時間なら教師は残っているはずなのだが。
声の聞こえる方へ走る。近づくにつれて、声の出所もつかめて来た。どうやら場所は生徒指導室らしい。
扉の前に立つと、声ははっきりと聞き取れた。中で何が行われているのか、想像すると恐ろしくなるような悲鳴だ。それと一緒に、何かを叩くような音も聞こえてくる。
よく分からないが、とりあえず放っておくわけにもいかない。
朋也は扉に手をかけた。
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190回目。
どれだけ泣いても、喚いても、声は途絶えなかった。
新しい痛みがやって来るたびに、喉の奥から叫びが引っ張り出される。
「ひぐっうう」
嗚咽にまみれて、まともに呼吸できない。視界は涙で溢れている。まるで、溺れているようだった。
途中、痛みに耐え切れず失禁したせいで、足元には小さな水溜りができていた。落ち着きなく足踏みをすると、ぴちゃぴちゃと音を立てた。
「ほれ、じっとせんか。191回目、いくぞ」
もはや叩くところがないくらいに真っ赤になった尻に、容赦のない一撃が振り下ろされる。
続けて2発、3発。
4発。打ち下ろしたところで、突如、指導室の扉が開いた。
「お、おい。何やってんだ」
杏は痛みに耐えることで必死だったが、それでも気づいた。
後ろで聞こえた声は、杏がよく知る人物のものであった。
「なんだ。岡崎か。こんな時間にどうした」
何気ない調子で、幸村が声をかける。
「そんなことはどうでもいいだろ。それより、これは一体なんだよ」
「お前も知っていただろう。こいつは再三の忠告もきかずに、バイク通学を繰り返した。その罰を与えていたところだ」
「罰って……じいさん、これは流石にやりすぎだろ」
「こういう輩は、やりすぎるくらいで丁度いい。ほどほどで済ますと、また同じ過ちを繰り返す。今日みたいにな」
杏は、二人の会話を聞いていた。しかし、頭が回らない。
(朋也? 間違いない。でもなんで、こんなところに。だって、あたし、今お仕置きされてるのに)
そこで気づく。これ以上ないほどの醜態を、自分は、晒してしまっているのだ。
「いやあっ」
すぐに床にうずくまり、できるだけ下半身を隠す。
こんな姿、絶対に見られたくなかったのに。押し寄せる感情で、息ができなくなる。
「こら、まだ残っているだろう。ちゃんと手をつくんだ」
幸村が杏の腕を掴み、引っ張りあげる。物凄い力だが、それでも杏は必死で抵抗した。
「まったく。ほら、言うことを聞け」
片手で杏を引っ張りつつ、空いた手を思いきり振り下ろす。鋭い音が鳴り響く。
たった一撃。しかし、今の杏を大人しくさせるには十分だった。無理やり元の姿勢に戻される。
「岡崎、お前はそこで見ておけ。そのほうが、こいつも反省するだろう」
「そ、そんな。お願いです先生。それだけは、許して下さい」
「お前には言うとらん」
杏の懇願にも一切耳を貸さず、一発、振り下ろされる。
「おいおい、まだやるのかよ。もういいだろ」
「心配せんでも、もうじき終わる。それに、こういうのは慣れとるからな。加減もわかる」
「……そうか」
朋也は複雑な表情を浮かべたが、それ以上なにも言わなかった。
幸村のいつにない気迫が、そうさせたのかもしれない。
「さあ、続きだ。一気に終わらせるぞ」
「……はい」
無抵抗になった杏は、自ら尻を突き出した。
それから残り6回。杏は最後まで泣き叫びながらも、なんとか終えることができた。
「ありがとう、ございました……」
しゃくりあげながらも、何とか礼をする。
そして、朋也の存在を気にして、すぐに下着に手を伸ばす。
「待て。それよりも、自分の粗相の片づけが先だ」
幸村が床を指差す。水溜りは、床板に若干しみこんでいた。
痛みで頭がぐちゃぐちゃになっていて、忘れていた。指摘された途端に、杏は顔を真っ赤にした。
「す、すみません。直ぐに片付けます。でも、下着だけは」
「駄目だ。まだ仕置きは終わっとらん。ほら、さっさと水を汲んで来い。どうせもう校舎にいるのはわしらだけだ」
言うと同時に、再び尻を引っ叩く。
「ひいっ」
一度叩かれると、もう何も言い返せない。杏の心は、完全に痛みに支配されていた。
片手にバケツを持ち、急いで生徒指導室を出る。
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「戻ったか。ずいぶん早かったな」
「は、はい……」
杏は少し息を乱しながら、答える。
幸村が言っていたように、確かに人の姿は見られなかった。しかし、それでも裸に近い格好で廊下に出るのはとてつもない恥ずかしさだった。一応周囲は気にしつつも、とにかく早く済ませようと水道までの往復は殆ど走っていきたのだ。
「さ、じゃあ早速掃除だ。ほれ」
そう言って、指導室の隅にあった雑巾を投げて渡す。
受け取った杏は、早く終わらせたい一心ですぐさま四つん這いの姿勢になって床を拭き始めようとする。
しかし、1秒もたたずに気づいた。急いで片手で尻を隠す。
(やだ、こんな格好じゃお尻の穴も、あそこも、全部丸見えじゃない)
そのまま片手だけを使って拭き掃除を再開する。
それを見た幸村は、隠し切れていない杏の尻を素早く叩く。
「見苦しい真似はするな。拭き掃除は両手を使ってやるもんだ」
「で、でも……」
目が合わないように視線を下げつつ、ちらりと朋也のほうを振り返る。
もう立ち直れないほどに醜態を晒したが、それでもこれ以上見られるのは耐えられなかった。
「小便のひとつも我慢できんような小娘が、今更恥ずかしがることもなかろう。それとも、こんなことも躾けてやらんとわからんか」
隠していた手を無理やり引き剥がし、3発、続けて打ち付ける。
「いや、あっ」
「嫌ならさっさと掃除をせんか。これでは夜になっても終わらんぞ」
「はい! もう生意気言いません。だからお尻、叩かないで……」
幸村の手が止まると、杏はすぐに掃除を始めた。
掃除をしている間、3人は一言も話さなかった。聞こえるのは、杏の息遣いと雑巾の擦れる音。あとは時計の秒針が進む音だけだった。
およそ5分程度だが、杏は生まれてから一番といっていいくらいに惨めな気分だった。下半身を全て見られながら、自分のおもらしを片付ける。これまでの彼女にとって、考えられないような状況だった。それに加え、冷静になった頭が先ほどまでに受けた仕打ちを嫌でも思い返させる。痛みとは無関係に、涙が止まらなかった。
それでも何とか掃除を終わらせると、ようやく下着とスカートを履く許可が与えられた。
真っ赤に腫れた尻は、下着に触れるだけで酷く痛んだが、それでも穿かずに帰るわけにはいかない。まだ罰は続いているのだと、実感させられた。
「先生、今日は本当にありがとうございました」
「ああ」
「もう絶対に、バイク通学はしません」
「そうか」
「では失礼します」
深々と礼をして、杏は指導室を出ようとした。
「ああ、ではまた明日、この時間にくるように」
「はい…………え? 今なんて」
はっきりと聞こえたが、それでも聞き違いかと思った。
「当たり前だろう。普通なら1ヶ月は停学だ。それが無くなるのだから、その分深く反省する必要がある」
「こんなのが、明日も」
「明日だけとは限らんよ。わしが『反省した』、と認めるまで毎日だ。今日のお前は、最後まで素直に罰も受けられんかった。あんな調子では、ずっと終わらんぞ」
「そ、そんな……」
やっと終わり。そんな喜びを完全に打ち砕かれた杏は、その場にへたりこんだ。
目の前が、真っ暗になったようだった。
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それから幸村による罰は、5日続いた。
毎日、泣き叫ぶ声が夕暮れの校舎に響き渡った。
最後に心から反省した杏は、今度こそ本当に、二度と校則違反をしないと誓うのだった。
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というわけで終わりです。
なんか書いてたら結構長くなりました。こんなに長いのは滅多に書かないので満足してます。
ただ、まあ、ちょっと言い訳があるので、この下に書きます。
言い訳なので、読んでも「ああ、言い訳だな」としか感じないと思います。つまり読んでも楽しくは無いです。
まあそんなにないんですけど、2つほど大きな欠陥があるので。
ひとつはまず、指導室に入ってからの岡崎がマネキンになっちゃってる問題ですね。
これは、「岡崎を指導室に入れたはいいけど、その後の扱いがどうにもならなかった」ということです。
あの状況で岡崎が幸村を止めないのは性格的に考えて絶対におかしいんですけど、止められちゃうと困るので。
かと言ってお仕置きに参加させるのはもっとあり得ないなってことで、放置することにしました。
「そうか……」と言って以降何も喋らなくなるシーンは、自分で書いてて「何こいつ」って思いました。
ふたつ目は、最後がめっちゃ雑ってところです。
書いてたんですけどね。その後岡崎と会って気まずくなるシーンとか。
ただグダグダだったというか、ちゃんと落ちなかったというか、要するにつまらなかったのでやめました。
お仕置きのシーンが終わったところで満足してしまった感も否めません。
もう十分書いたしいっか!って感じで。
そんな言い訳でした。ありがとうございました。
後編も大変良かったです。
日数の経過によって反省の気持ちが消えた杏が、最初から生尻を丸出しにされて、前回の2倍のお尻200叩きを受けるシチュエーションも文句なしに素晴らしいですし、机の上に両手を乗せて前屈みの姿勢でのお尻叩きは、膝の上に乗せられてのお尻叩きとは異なる良さがあります。
それに、幸村先生の強制で杏が下を全て脱いでいくシーンも想像しただけでドキドキしますし、お尻叩きの途中で杏が失禁して足元に水溜りができるシチュエーションや、下半身丸裸のまま自分が漏らしたオシッコを四つん這いの格好で拭き掃除させられている杏の姿も堪らないです。
それと岡崎の件ですが、確かに原作の岡崎だったら間違いなく体を張ってでも幸村先生を止めたでしょうけど、コチラの岡崎は、幸村先生からの容赦ないお尻叩きのお仕置きを受けて、真っ赤に腫れ上がった杏のお尻&普段からは想像つかない杏の泣き顔を見て、可哀想と思いつつも妙に興奮していると、勝手ながらも、そのように解釈してしまいました。
それに、岡崎が指導室に入ってきた事による杏の恥じらう姿も良い味が出ていると思います。
おまけに、その後も杏が幸村先生によるお尻200叩きの罰を5日連続で受ける展開は良い意味で予想外ですね。
これだけお尻を叩かれ過ぎたら、杏の腫れ上がったお尻が真っ赤を通り越して紫に変色したのでは?と思うと、ますますドキドキします。
ストーリの終盤にありますように、流石の杏も本当に懲りて2度とバイク通学しなくなった訳ですが、その代わり、月に何回か寝坊で遅刻をして、幸村先生に放課後の指導室に呼び出されて下半身丸裸にされて、幸村先生から平手で思いっきりお尻100叩きのお仕置きをされ、幸村先生は相変わらず杏の生尻&マンコを見ても何の反応も示さず、やがて杏も幸村先生に下半身の裸を見られても恥ずかしいと思わなくなっていきますが、幸村先生によるお尻平手打ちの激痛には慣れる事はなく、遅刻の罰の度に杏の泣き叫ぶ声が夕方の校舎に響き渡る展開も充分にあり得そうです。(遅刻はそう簡単には治らないと言いますので)
これも仮定の話ですが、もしも仮に杏が、これだけの目にあったにも関わらず、お尻が完治した後に懲りずにバイク通学をして幸村先生に見つかったら、激怒した幸村先生によって、下半身丸裸で四つん這いになってお尻を突き上げる格好にさせられて、「木の棒」か「木刀」で思いっきり数百発、下手したら1000発以上お尻を滅多打ちされて、杏のお尻が義武くんよりも遥かに悲惨な状態になったのは必至かと。
またしても変な妄想をしてしまいましたが、リクエストに答えていただいて心から感謝しています。