今日はクリスマスイヴですが、僕は会社でうんこを漏らしました。
幸い誰にもばれていないっぽいのですが、「クリスマスイヴにうんこを漏らした」という事実は、独りで抱えて生きていくには重過ぎます。しかし、こんなことは友達にも同僚にも言えませんし、ツイッターとかは「頑張ったら特定できる可能性がある」という程度に個人情報を書いてしまっていて、うんこを漏らしたことが書いてあるアカウントは絶対に特定されたくないので、ここに書くことにしました。もう誰も見ていない可能性すらあるブログなので、うんこ漏らし報告に使ってもいいでしょう。
今日は夜10時過ぎまで残業していて、ついさっき帰ってきてパンツを洗ったわけですが、まさかうんこを漏らした奴が夜10時まで残業しているとは、同僚達も思っていなかったことでしょう。
もともと、僕は常人よりも高い確率でうんこを漏らす人間だったので、ノーパン状態で後輩に仕事の指示を出すのも、堂々とやってのけました。漏らす直前は流石に焦りますが、そこを過ぎてしまえば、あとは慣れたものです。でも、今日はイヴなので、心に受けた傷は、それなりに大きかったです。普段なら、漏らしてもわざわざブログには書きません。
まあそんなところで、今は、帰りに買って来たケーキを一人で食べながらこのブログを書いています。うんこ漏らし野郎にお似合いの、茶色いケーキです。書きたいことは書いたので、終わりです。ありがとうございました。
数日後。
「なあ、岡崎」
休憩時間に入った途端、春原が朋也に声をかける。
「なんだ」
「いや、杏のことなんだけどさ」
「杏? あいつがどうかしたのか」
朋也はそう答えつつも、春原が何を言いたいのか大方察しがついていた。
「いや、何ていうかさ、あいつ最近、妙に大人しいっつーか、真面目になったっつーか。とにかく、何かおかしくないか」
「……ああ、それは俺も思ってた」
何かあった。それは間違いない。
ここ数日、杏は明らかに様子が違っていた。
いつものように春原に暴力を振るうこともないし、スクーターで登校する様子も見かけない。恐らく、毎日真面目に歩いて登校しているのだろう。
それ以前に、春原の言う通り、話していてもどこか妙に「大人しい」のだ。それほど露骨なものでもないが、ある程度付き合いがあればわかる。
あの日。幸村にスクーター登校がみつかった翌日からだ。
やはり幸村に目をつけられていて、案の定見つかってしまったのだろうか。忠告してやるべきだったか。しかしそうだとすると、普通に登校しているのは妙な話だ。二日続けてのスクーター登校なら、停学は確実だろう。
(いや、でも、あの爺さんもよくわからんからなあ)
何か特殊なやり方で杏を矯正したのかもしれない。あの杏を大人しくさせるような、何かで。
(……そんなのあるか?)
考えていると、また春原が話し出す。
「いやさ、実際のところ、僕には大体検討がついてるんだよね」
「……一応、話してみろ」
自信満々な話しぶりに不安を覚えつつも、続きを促す。
「見てて気づいたんだけど、あいつ、最近いっつもそわそわもじもじしてて、とにかく落ち着きがないんだよね。で、たまにさ、自分の尻を押さえるんだよ。『もう耐えられない!』みたいな感じでさ」
こいつ、そんなところまでチェックしてるのか。
朋也は春原の言動に既に引き気味であったが、全くに気にせず、むしろ得意げに春原は続ける。
「まあ、ここまで言えば岡崎でもわかるかな。僕は気づいちゃったんだよ。
そう、あいつはここ数日――げりぇあえおっ!!」
春原が椅子ごと後ろにひっくり返る。バサッと音がした方を見ると、床に転がっているのは国語辞典。
教室の入り口に、杏が立っていた。
「あたしが、どうしたって」
早足で教室の中にずんずん進んでくる。恐ろしいことに、笑顔だ。
その声音に危険を察知したのか、春原は倒れたまま息も絶え絶えに答える。
「い、いえ、何でもありません」
「そう。ならいいんだけど。あんまり妙なことを、大きな声で話さないでもらえる」
「はい。肝に銘じておきます……」
そして春原は沈黙した。 数日振りだから余計に効いたのか、しばらくは起きそうにない。
「よお、元気になったのか」
「は、はあ? あたしはいつも元気だけど」
「そうか。最近そう見えなかったからな。春原もあんな感じだけど、心配してたと思うぞ」
「よけいなお世話よ。何でもないから」
そう気まずそうに言って、足早に去っていった。
明らかに何でもなくはない様子だが、あまり触れられたくないようなので朋也は何も言わずに見送った。
(幸村の爺さん、いったい何したんだ)
朋也の疑問は膨らむ一方だった。
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それから更に数日。
杏はすっかり元の調子に戻っていた。
確かにあの日から数日間は反省しきりであった。
椅子に座るたびにずきずきと、あの時の光景が思い出され、辛く情けない気持ちになった。そしてそれ以上に、深い後悔の念があったのだ。自分の行いが如何に浅はかで、卑怯なものであったのか。消えない痛みが、それを強制的に考えさせる。
それに、あんな目に遭うのは二度と御免だ、という気持ちももちろんあった。
しかし、時の流れが、それらをいとも簡単に消し去った。
尻は治り、痛みは消え、辛い思い出は薄れ、反省の気持ちも徐々になくなっていった。
そして今朝は久々の寝坊だ。緊張感が薄れたせいか、いつもより余計に眠ってしまったようだ。
(やばい)
すぐに着替えて支度を済ませるが、最早どう考えても徒歩では間に合わない。走ったとしても厳しいだろう。
遅刻確定か、と一度諦めかけたが。
(あ……)
ほんの数日前ならばありえない選択肢。しかし、今となってはそれを咎める痛みも、消え失せていた。
数秒の葛藤の末、杏は誘惑に負けた。
とは言え気にしないわけではない。スクーターを走らせながら、杏は考えた。そして空いた時間を限界まで使って、今までよりも更に安全な、駐輪場ですらない茂みの奥に証拠を隠しておいた。それからは徒歩で、他の生徒達に紛れ込む。何食わぬ顔で校門を通過する。完璧だった。
「おはようございます」
幸村の姿がみえた。いつも通り、挨拶をする。
「ああ、おはよう」
そしてそのまま通り過ぎる。
校舎に入り、靴を履き替え、教室に向かう。
……何も言ってこない。
気づいていない。
流石にばれていないだろうと思いつつも不安でいっぱいだった杏は、教室に着くなり大きなため息をついた。地雷原を歩いて通り抜けたような気分だ。
通学のたびにこんな気持ちになっていたら、いつか心臓が破裂してしまう。やはり、スクーターはなるべく使わないようにしよう。
そんな事を考えつつ真面目に授業を受け、その日は何事もなく放課後となった。
帰りもなるべく人に見られないよう、他の生徒よりも少し時間を遅らせた。
窓から様子を伺い、幸村が校門からどこかに移動したタイミングを狙って教室を出る。
「よお、杏」
廊下を歩いていると、背後から声をかけられた。一瞬驚いたが、すぐに声で気づいた。
「あら、陽平。朋也は一緒じゃないの」
「ああ、あいつならまだ寝てるよ。まあ、今日は僕もちょっと用事があって忙しいからさ。むしろ好都合だよ」
「へえ。そうなんだ。じゃあね」
「ちょっと! 何の用事か聞かないの」
杏にはそんな話を聞いている暇はない。幸村がいない今のうちに、素早く帰らなければならないのだから。無視して歩き続ける。
「あ、そういえばさ!」
少し離れた位置から春原の声が聞こえる。
「スクーター通学、やめた方がいいんじゃないの。ばれたら停学じゃ」
「でかい声で言ってんじゃないわよ!」
一喝すると、春原はすぐに逃げていった。
どうやら今朝、見られていたようだ。相手が春原で助かった。もしそれが幸村だったらどうなっていたことか。
少しヒヤリとしつつも、特に問題なく校舎を出られた。
そのまま行きと同じ道を歩き、スクーターを停めてあった場所までたどり着く。
(やっとここまで……ほんと、生きた心地がしない)
ここまでくれば完全に教師のチェック範囲外だ。まして幸村のような老人が、こんな所まで見回りに来ているはずがない。
スクーターを引っ張り出し、鍵を挿す。後は遠回りに帰るだけだ。
「ずいぶん、遠くに停めたもんだ」
突然、背後から声が聞こえた。
びくり、と反応し、心臓の鼓動がどんどん大きくなる。
この声は、一番聞きたくなかった声だ。
確かな絶望を感じながら、ゆっくりと振り返る。
「先生……なんで」
「うむ、そろそろ、もしかしたらと思ってな。疑っておいて何だが、正直がっかりしとるよ」
幸村はいつもの柔和な表情をわずかに曇らせ、ゆっくりと話す。
「どうも、この間のでは罰が足りんかったらしいな。しかし、まあ、それはわしの落ち度でもある。
もう一度、今度は徹底的に叩き込んでやる。さあ、来なさい」
「そ、そんな……」
もう、何も考えられなかった。
幸村に手を引かれて校舎に逆戻りして生徒指導室に入るまで、杏は顔面を蒼白にして、俯いていた。
「さあ、これから自分が何をされるか、わかっているな」
部屋に入り、戸を閉める。
幸村の口調はいつになく厳しい。すでに泣きそうな顔の杏は、黙って頷くしかなかった。
「ならさっさとこっちに来なさい」
幸村が部屋の中に進む。杏も、とぼとぼと歩みを進める。
「そこに手をつくんだ」
中央辺りに設置された長机を指差す。杏は言われたとおり、両手を机の上に乗せる。
机は腰ほどの高さなので、両手をつくと少し前かがみになった。
「さて、始めるぞ……ああ、その前に、下は全部脱いでおきなさい」
「へ?」
思わず声が出た。下を全部。一瞬考え、すぐに理解した。
前回後半の地獄のような痛みが、初めからずっと続く。そういう意味だ。
それに、手をついて下着まで完全に脱いでしまえば、なにも隠すことができない。文字通り、何もかも丸見えになってしまう。年頃の杏にとって、とても耐えられることではない。
「ど、どうして」
この間のように膝の上で、下着をずり下げるような形ではないのか。そう聞こうとした。
しかし言葉を出し切る前に、幸村が答える。
「言ったじゃろ。今度は徹底的に躾ける、と。
さ、それ以上は説明するより体感したほうが早い。早く脱ぎなさい」
言うと同時に、尻を引っ叩く。いきなりの痛みに、小さな声が漏れる。
「ほれさっさとせんか。今日は200回。終わるまで帰さんからな」
「そんな!」
幸村の言葉に、杏の顔が強張る。
200回。前回の倍の数だ。
前回でさえ、限界は超えていた。倍なんて耐えられるはずがない。
流石に抗議しようとするが、それを遮るかのように続けて2発、鋭い痛みが走る。
「ひっ」
「言っておくが、これは数に入らんからな。自分で脱げんのなら、服が擦り切れるまで叩いてやろうか」
更に3発。一つ一つの衝撃が、心なしか前回よりも大きく感じる。
責め立てるような口調は、いつもの幸村からはとても想像できない。
杏はその時になってようやく気づいた。幸村は、怒っているのだ。
「ご、ごめんなさい。すぐ脱ぎます。だからやめて」
「はようそう言わんか」
幸村の手が止まる。
急いで靴と靴下を脱ぐ。早くも杏の目からは、涙がこぼれ始めた。
しかし、ぐずぐずしていられない。恥ずかしさを押し殺して、自らスカートに手をかける。
スカートを床に落とすと、白い下着が露になった。これも、自分で脱がなければならない。
顔が赤くなっているのがはっきりとわかった。前回のように人に脱がされるのとは、わけが違った。
それでも、もう逃げ場はない。すぐに覚悟を決めた杏は、一気に下着を脱ぎ去った。
「それでいい。さあ、これから仕置きを始めるが、何か言うことはないか」
「……はい、先生、すみませんでした。お仕置をお願いします」
「うむ、素直でよろしい。だが、だからといって手を抜くつもりはないぞ」
その直後、生徒指導室から乾いた音が響き渡った。
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――目が覚めた。外を見ると、既に夕日が落ちかけていた。
「もう、こんな時間か」
教室には、朋也以外誰もいない。
「春原のやつ、帰るんなら起こしてからにしろよ」
愚痴りつつ、鞄を手にして教室を出る。
廊下を歩いていても、人の姿が見当たらない。もう、部活も終わっている時間だ。
もし教師にみつかったら、「こんな時間まで何をしていた」と咎められるだろう。素行不良で目をつけられている朋也ならなおさら、厳しい追求は避けられない。
仕方がないので、さっさと帰ることにした。といっても向かう場所はいつものように春原の部屋だが。
(……いや、そういえば、あいつ用事があるとか言ってたな。じゃあ、寮に行っても留守か)
珍しくナンパが成功したとか、そんな話だったような気がする。
その時既に眠りかけていたのでろくに聞いていなかったが、本当に珍しいことなので、なんとなく覚えていたらしい。
(この辺りに住んでいてあいつの悪評を聞いてないような子が、まだいたとはな……ん?)
不意に立ち止まる。
遠くから、何か聞こえる。
歩みを進めると、次第にはっきり聞こえてくる。女の子が、泣き叫ぶ声だ。
(おいおい、学校で一体なにやってんだよ)
この時間なら教師は残っているはずなのだが。
声の聞こえる方へ走る。近づくにつれて、声の出所もつかめて来た。どうやら場所は生徒指導室らしい。
扉の前に立つと、声ははっきりと聞き取れた。中で何が行われているのか、想像すると恐ろしくなるような悲鳴だ。それと一緒に、何かを叩くような音も聞こえてくる。
よく分からないが、とりあえず放っておくわけにもいかない。
朋也は扉に手をかけた。
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190回目。
どれだけ泣いても、喚いても、声は途絶えなかった。
新しい痛みがやって来るたびに、喉の奥から叫びが引っ張り出される。
「ひぐっうう」
嗚咽にまみれて、まともに呼吸できない。視界は涙で溢れている。まるで、溺れているようだった。
途中、痛みに耐え切れず失禁したせいで、足元には小さな水溜りができていた。落ち着きなく足踏みをすると、ぴちゃぴちゃと音を立てた。
「ほれ、じっとせんか。191回目、いくぞ」
もはや叩くところがないくらいに真っ赤になった尻に、容赦のない一撃が振り下ろされる。
続けて2発、3発。
4発。打ち下ろしたところで、突如、指導室の扉が開いた。
「お、おい。何やってんだ」
杏は痛みに耐えることで必死だったが、それでも気づいた。
後ろで聞こえた声は、杏がよく知る人物のものであった。
「なんだ。岡崎か。こんな時間にどうした」
何気ない調子で、幸村が声をかける。
「そんなことはどうでもいいだろ。それより、これは一体なんだよ」
「お前も知っていただろう。こいつは再三の忠告もきかずに、バイク通学を繰り返した。その罰を与えていたところだ」
「罰って……じいさん、これは流石にやりすぎだろ」
「こういう輩は、やりすぎるくらいで丁度いい。ほどほどで済ますと、また同じ過ちを繰り返す。今日みたいにな」
杏は、二人の会話を聞いていた。しかし、頭が回らない。
(朋也? 間違いない。でもなんで、こんなところに。だって、あたし、今お仕置きされてるのに)
そこで気づく。これ以上ないほどの醜態を、自分は、晒してしまっているのだ。
「いやあっ」
すぐに床にうずくまり、できるだけ下半身を隠す。
こんな姿、絶対に見られたくなかったのに。押し寄せる感情で、息ができなくなる。
「こら、まだ残っているだろう。ちゃんと手をつくんだ」
幸村が杏の腕を掴み、引っ張りあげる。物凄い力だが、それでも杏は必死で抵抗した。
「まったく。ほら、言うことを聞け」
片手で杏を引っ張りつつ、空いた手を思いきり振り下ろす。鋭い音が鳴り響く。
たった一撃。しかし、今の杏を大人しくさせるには十分だった。無理やり元の姿勢に戻される。
「岡崎、お前はそこで見ておけ。そのほうが、こいつも反省するだろう」
「そ、そんな。お願いです先生。それだけは、許して下さい」
「お前には言うとらん」
杏の懇願にも一切耳を貸さず、一発、振り下ろされる。
「おいおい、まだやるのかよ。もういいだろ」
「心配せんでも、もうじき終わる。それに、こういうのは慣れとるからな。加減もわかる」
「……そうか」
朋也は複雑な表情を浮かべたが、それ以上なにも言わなかった。
幸村のいつにない気迫が、そうさせたのかもしれない。
「さあ、続きだ。一気に終わらせるぞ」
「……はい」
無抵抗になった杏は、自ら尻を突き出した。
それから残り6回。杏は最後まで泣き叫びながらも、なんとか終えることができた。
「ありがとう、ございました……」
しゃくりあげながらも、何とか礼をする。
そして、朋也の存在を気にして、すぐに下着に手を伸ばす。
「待て。それよりも、自分の粗相の片づけが先だ」
幸村が床を指差す。水溜りは、床板に若干しみこんでいた。
痛みで頭がぐちゃぐちゃになっていて、忘れていた。指摘された途端に、杏は顔を真っ赤にした。
「す、すみません。直ぐに片付けます。でも、下着だけは」
「駄目だ。まだ仕置きは終わっとらん。ほら、さっさと水を汲んで来い。どうせもう校舎にいるのはわしらだけだ」
言うと同時に、再び尻を引っ叩く。
「ひいっ」
一度叩かれると、もう何も言い返せない。杏の心は、完全に痛みに支配されていた。
片手にバケツを持ち、急いで生徒指導室を出る。
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「戻ったか。ずいぶん早かったな」
「は、はい……」
杏は少し息を乱しながら、答える。
幸村が言っていたように、確かに人の姿は見られなかった。しかし、それでも裸に近い格好で廊下に出るのはとてつもない恥ずかしさだった。一応周囲は気にしつつも、とにかく早く済ませようと水道までの往復は殆ど走っていきたのだ。
「さ、じゃあ早速掃除だ。ほれ」
そう言って、指導室の隅にあった雑巾を投げて渡す。
受け取った杏は、早く終わらせたい一心ですぐさま四つん這いの姿勢になって床を拭き始めようとする。
しかし、1秒もたたずに気づいた。急いで片手で尻を隠す。
(やだ、こんな格好じゃお尻の穴も、あそこも、全部丸見えじゃない)
そのまま片手だけを使って拭き掃除を再開する。
それを見た幸村は、隠し切れていない杏の尻を素早く叩く。
「見苦しい真似はするな。拭き掃除は両手を使ってやるもんだ」
「で、でも……」
目が合わないように視線を下げつつ、ちらりと朋也のほうを振り返る。
もう立ち直れないほどに醜態を晒したが、それでもこれ以上見られるのは耐えられなかった。
「小便のひとつも我慢できんような小娘が、今更恥ずかしがることもなかろう。それとも、こんなことも躾けてやらんとわからんか」
隠していた手を無理やり引き剥がし、3発、続けて打ち付ける。
「いや、あっ」
「嫌ならさっさと掃除をせんか。これでは夜になっても終わらんぞ」
「はい! もう生意気言いません。だからお尻、叩かないで……」
幸村の手が止まると、杏はすぐに掃除を始めた。
掃除をしている間、3人は一言も話さなかった。聞こえるのは、杏の息遣いと雑巾の擦れる音。あとは時計の秒針が進む音だけだった。
およそ5分程度だが、杏は生まれてから一番といっていいくらいに惨めな気分だった。下半身を全て見られながら、自分のおもらしを片付ける。これまでの彼女にとって、考えられないような状況だった。それに加え、冷静になった頭が先ほどまでに受けた仕打ちを嫌でも思い返させる。痛みとは無関係に、涙が止まらなかった。
それでも何とか掃除を終わらせると、ようやく下着とスカートを履く許可が与えられた。
真っ赤に腫れた尻は、下着に触れるだけで酷く痛んだが、それでも穿かずに帰るわけにはいかない。まだ罰は続いているのだと、実感させられた。
「先生、今日は本当にありがとうございました」
「ああ」
「もう絶対に、バイク通学はしません」
「そうか」
「では失礼します」
深々と礼をして、杏は指導室を出ようとした。
「ああ、ではまた明日、この時間にくるように」
「はい…………え? 今なんて」
はっきりと聞こえたが、それでも聞き違いかと思った。
「当たり前だろう。普通なら1ヶ月は停学だ。それが無くなるのだから、その分深く反省する必要がある」
「こんなのが、明日も」
「明日だけとは限らんよ。わしが『反省した』、と認めるまで毎日だ。今日のお前は、最後まで素直に罰も受けられんかった。あんな調子では、ずっと終わらんぞ」
「そ、そんな……」
やっと終わり。そんな喜びを完全に打ち砕かれた杏は、その場にへたりこんだ。
目の前が、真っ暗になったようだった。
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それから幸村による罰は、5日続いた。
毎日、泣き叫ぶ声が夕暮れの校舎に響き渡った。
最後に心から反省した杏は、今度こそ本当に、二度と校則違反をしないと誓うのだった。
終わりが見えてきたので投稿します。まずは半分。
始業チャイムまであと5分。
「ちょっと、朋也どいてどいてー!」
「……おおっ!?」
アクセル全開で突っ込んでくるスクーター。岡崎朋也はそれを寸前でかわす。
背後からの不意打ちにも関わらず、危なげない回避だ。既に2度ほど経験があるせいで、体が覚えているのかもしれない。
「……ってまたかよ」
スクーターはその後すぐに急ブレーキをかけた。甲高い音が朝の通学路に響く。
「ごめん朋也。大丈夫だった?」
振り返った藤林杏が、シートにまたがったまま声をかける。
「大丈夫なわけねえだろ。何回言わせんだよ殺す気か」
「元気そうね。じゃあ」
そのまま何事も無かったように走り出そうとする。
「ちょ、おい! 死ぬところだったぞこっちは」
「なによ、怪我一つ無いくせに。大体あんた、避けるとき結構余裕だったじゃない」
「お前のせい慣れちまったんじゃねえか。俺じゃなかったら直撃してたぞ、今のは」
「じゃあ朋也でよかったってことね。ありがと。ってもう時間ないじゃない!こんな事してる場合じゃ」
慌てる杏をみて、朋也も時計を確認する。チャイムまで残り3分。
「おお、もうこんな時間か」
「あんたと違ってあたしは学級委員だから、遅刻だらけってのもまずいわけ。じゃあね」
そう言って再びアクセル全開で去っていく。明らかに原付の法定速度を超過している。
「つーか、それが無断でバイク通学してる奴のセリフかよ……」
本末転倒だな。
嘆息し、朋也はのんびり歩いて学校に向かう。当然、遅刻確定だ。
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「セーフ。ギリギリだけど、何とか間に合った」
校舎から少し離れた場所にスクーターを停めてきた杏は、安堵の息を吐きながら校門をくぐる。
「ちょっと待て。藤林」
「えっ」
不意に呼び止められて思わず硬直する。振り返ると、そこにいたのは古文教師の幸村だった。
……なんだ、幸村のおじいちゃんか。
呼び止められた瞬間は内心ヒヤッとしたが、この人であれば特に問題は無いだろう。杏はすぐに落ち着き、いつも通りに振舞う。
「あ、先生。おはようございます!」
いかにも優等生といった感じの快活な挨拶。この辺りの教師受けの良い行動は、遅刻常習犯である杏にとって基本的な技術だった。おかげで朋也や陽平のように厳しく責められる事は殆どない。
しかし、今日は少し違った。幸村はいつもの和やかな表情を崩さずゆっくりと返す。
「おはよう。ところでさっきのバイクだが」
「!」
ばれてた。
どうやら見逃していなかったらしい。
だが、それも冷静に考えればおかしなことではない。
いつもは校門周辺を通るときは必要以上に警戒していたが、今日は流石に時間がなかったから最短コースで校門前を突っきっていたのだ。人がいればばれるに決まっていた。
「あー……あれは」
流石の杏もあせる。ばれたという事実が思考を停止させる。
停止。停学。そんな単語が頭をよぎる。
(まずい。これは流石にまずい。停学なんて冗談じゃないし、でもばれちゃった以上言い逃れなんて……)
「どうした。言い訳があるなら、聞くが」
(でも相手は幸村のおじいちゃんだし、やり方しだいでは何とか……。何て言って切り抜けるか。言い訳なんてしたら逆効果な気も)
僅か数秒の沈黙の後、杏の答えが出た。
「ごめんなさい!」
直球だ。素直に謝って許しを乞う。これが最善であると、杏は判断した。
「バイク買ったばかりだからつい乗って来たくなってしまって……でももう反省してます!二度とバイク通学なんてしません。ごめんなさい!」
深々と頭を下げる。こういうのは思い切りの良さが大事だ。計算で動いていると思われたら負けである。それに年配の幸村は、ひねた言い訳よりも素直な謝罪を好むはずだ。多分。
要は印象が大事。場合によっては減刑もあり得るだろう。
「……まあ、一度は多めに見てもいい。次はないが」
「本当ですか!?」
ばっと顔を上げる。まさか無罪とは。驚くままに声を上げた。
「ありがとうございます!」
「……反省してるなら、それでいい」
思わずガッツポーズを取りそうになるが、何とか抑えて再び頭を下げる。
こんな簡単に許してもらえるとは。楽勝と言っていいくらいだ。
「当然、遅刻扱いになるが。……岡崎、お前またか」
「えっ」
前方を見ると、ちょうど朋也が校門をくぐる所だった。悪びれもせず幸村に挨拶をしている。
そのまま二人で校舎に入る。
「よお。先に行ってたのに、どうしたんだ」
「ああ、ちょっとね」
杏はスクーターの一件を朋也に話す。
「なるほどな。じいさん相手で助かったな。普通なら停学もんだろ」
「まあね。流石に今日は油断しすぎたわ」
「どうせいずればれてただろうし、もうやめとけよな。その方が俺も轢かれなくて済むし」
「遅刻常習犯が何を偉そうに。大丈夫よ。いつも通りなら絶対にばれない自信あるし」
「そうか。まあ、俺はお前が突進してこないならそれでいいんだけどな」
教室に着いて、二人は分かれた。
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翌日。
「朋也! 後ろー!」
「うおお、お前またかよ!」
朋也は今日も寸での所でスクーターの一撃を回避する。
「お前そのうち人殺すぞ!ってか昨日の今日でもう乗ってるのか。大丈夫かよ」
「だから大丈夫だって。自信あるから」
「じいさんも流石に目光らせてるだろ。見つかったら今度こそ停学だぞ」
「もう忘れてるでしょ昨日のことなんて。年なんだから」
「いやそうかも知れんが」
「そういう訳だから。心配してくれてどうも。じゃあね」
朋也は呆れ顔で、走り去る杏を見送った。
(幸村のじいさんは案外抜け目ないというか、鋭いところもあるからな……。普段がああだからなかなか気付き辛いが)
あっという間に遠くなるスクーターを眺めながら、朋也は若干の不安を抱いていた。
思えば、問題児である春原と自分を引き合わせたのは他でもない幸村だ。最初はただの偶然かと思っていたが、考えてみれば、そうなるように意図的に仕向けた節もある。
春原も自分も、お互いに出会っていなければとっくに学校なんて辞めていたのだろう。あの老人ならば、それを事前に察知して阻止するよう働きかけるくらい、簡単にやってのけるような気がする。
(つっても、杏があっさり停学食らう展開なんて、それこそ全く想像できん。あいつの要領の良さは折り紙つきだしな。心配するだけ無駄か)
のんびりと歩きながら思う。
今日は昨日と比べて少し早い。これなら遅刻もないだろう。朋也にとっては、どうでもいいことだが。
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スクーターを停める。
杏は同じ失敗を繰り返すような女ではない。今日は時間に余裕もあるので、当然いつもの安全なルートを通ってきた。これならば、まず教師の目に付くことはない。
更に念のため、駐輪場所も昨日とは変えておいた。万が一幸村が駐輪所で見張っていたとしても、これで安全だ。
(そこまでする必要もないんだろうけど)
駐輪所からは歩いて校門まで向かう。その足取りには、微塵も不安はなかった。堂々としていれば、昨日のようなミスがない限りそうそうばれないものだ。
校門のすぐそばに幸村がいる。いつもの穏やかな表情で、通り抜ける生徒達と挨拶を交わす。
杏もその中に紛れ込み、普段どおりに挨拶してみせる。
「先生、おはようございます」
「ああ、おはよう。今日はバイクじゃないのか」
突然出てきた「バイク」の単語に内心ドキッとしたが、杏は笑顔を崩さずに返す。
「やだ先生。もう乗りませんって言ったじゃないですか。あたし、そんな嘘つきに見えますか」
「ああ、見えるな。今も嘘ついとるくらいだからなあ」
「……え」
「昨日の今日では流石にないだろう、なんて思っとったが……。反省した、なんて言っとったのも嘘みたいじゃな」
え。
鼓動が早くなる。
まさか、今日もばれてる? でも何で。どうやって。
笑顔が張り付いたまま、杏の頭は真っ白になった。
「まあ、話は放課後だ。生徒指導室まで来るように」
そう言うと、幸村は杏に背を向けてのろのろと去っていった。
淡白だが、言い訳を許さない迫力を感じさせた。
「どうしよう……」
甘く見ていた。
杏は今更ながら、自分の計算ミスを嘆いた。
あまり授業にも集中できないまま時間は過ぎ去り、放課後となった。
当然、足取りは重い。
今回ばかりは、言い訳しようが素直に謝ろうが何らかの罰は避けられないだろう。
いくら幸村が温厚だからと言っても、停学ものの校則違反を2日連続で行ってただで済むわけがない。昨日の無罪放免をもう一度、何て甘い展開はとても期待できないだろう。
しかし恐らく、幸村はバイク通学の件をまだ誰にも話していない。今日一日、他の教師からその件について一切触れられなかったからだ。杏のような教師受けのいい生徒がバイク通学なんてしていたら、もっと騒がれていないとおかしい。
つまり今なら、杏を生かすも殺すも幸村次第、というわけだ。
(言葉は慎重に選んで、とりあえず反省してるようにみせないと)
生徒指導室。
歩きながら色々とシミュレーションしていたら、思っていたよりも早く着いてしまった。
流石の杏も、緊張を隠せない。恐る恐る扉をノックする。
すぐに返事が返ってくる。いつもの穏やかな口調で。
「入りなさい」
「失礼します」
扉を開ける。
椅子に座った幸村が、杏を見るなり手招きをする。
「まあ、座りなさい」
杏は扉を閉めると、静かな足取りで幸村と向き合うように置かれている椅子の隣まで進んだ。
そして、勢いよく頭を下げる。
「すみませんでした!」
とりあえず謝る。昨日の謝罪が本気でなかったことは既にばれているのであまり意味がないかも知れないが、言い訳するよりはずっとましだ。
「頭を上げなさい」
3秒ほど経ってから幸村が言う。しかし杏はそれでも頭を下げたままだ。
「あの、先生あたし……」
「……なんとなく、わかるんじゃよ。そういう上辺だけの謝罪は。昨日もそんな感じだったから、怪しい思っっとったんよ」
「まあ、勘違いだったら気の毒な話だが、どうやらその心配は無用だったようだな」
「……え?」
思わず顔を上げる。幸村が何を言っているか、杏にはすぐに理解できた。
つまり、かま掛けられてたってこと?
「一度目は口頭注意で許したが……言ったと思うが、二度目はない」
「そ、そんな、先生」
「口で言ってもわからんようだからな。そのままこっちに来なさい」
口で言っても、って。まさか体罰。
といってもこんなよぼよぼの老人に体罰を食らっても大したダメージにはならないだろうし。そもそもこの人が生徒に手を上げるところなんて想像もつかない。
頭の中が混乱し始めていたが、杏はとりあえず指示に従って幸村の隣に来た。
「先生、あたしもう二度と……」
「謝罪は罰が済んでから聞く。こっちだ」
グッと手を掴まれ、そのまま引き寄せられる。杏は反射的に抵抗したが、見た目からは想像できないほどの強い力がそれを許さなかった。
あっという間に、杏は幸村の膝の上に乗せられた。
「ちょっと、何を」
「だから言っただろう。罰を与えるんだ。男なら拳骨入れてるところだが、女子にはこれが一番効く」
幸村が腕を思いっきり振り上げる。杏は視界の端でそれを捉え、思わず目を瞑る。
(嘘。これってまさか)
杏の予想は的中した。振り下ろされた手のひらが杏の尻にぶつけられる。乾いた音が鳴り響き、同時に杏が声を上げる。
「きゃっ! いった……」
思わず自分の尻に手をやる。
ひりひりとした感覚が残っている。
「手をどけなさい」
「……あっ」
手首をつかまれ、無理やり尻から離されてそのまま押さえつけられる。先ほどと同じで、とても定年間近の老人とは思えない力だった。
「じっとしていろ。まだまだ始まったばかりなんだ」
言い終わるが先か、2発目、3発目と続けざまに叩き込まれる。
「ひやっ」
杏の頭は完全にぐちゃぐちゃになっていた。
(なんで? お尻叩きってそんなのされた事もないのに、こんなおじいちゃんに。全然動けないし、どうなってるの)
突然尻を叩かれた驚きと恥ずかしさで、思考がまとまらない。
更に、4発、5発と続くごとに尻の痛みも激しくなってくる。
「どうだ、少しは反省できてきたか」
15発目。杏は痛みでまともに返事もできなかった。
声が外に漏れないように必死で耐えながらも、既に目じりには涙が溜まっていた。
そのまま仕置きは続く。20、30と回数を重ねるにつれて、杏は泣き声を抑えられなくなっていった。恥ずかしさや後のことを考える余裕はどんどん無くなっていき、ただ、この場から逃れたいという気持ちだけが強まっていた。
そして50発目を迎えたところで、幸村は一旦手を止めた。
既に杏の泣き叫ぶ声は、隣の部屋に届くほどに大きくなっていた。
(終わった……?)
次の一撃がこない。やっと解放されるのだろうか。
そんな期待が杏の脳裏をよぎる。
「50回。少し疲れたな。こんな指導をしたのは久しぶりだ」
「せ、先生。もう……」
「ああ、あと半分だ。しっかり反省しなさい」
半分。
そんな。これがまだあと半分なんて。
絶望が杏を包み込む。これ以上続いたら、本当にどうかしてしまう。
「耐えられないです。先生、もう許して下さい」
停学のことなどはもう頭にない。これ以上尻を叩かれたくない、ただそれだけだった。
「……まだ全然反省できていないようだな。どれ、少し厳しくするか」
杏の願いもむなしく、幸村はそう言うとすっとスカートに手を伸ばした。
そして一気に捲り上げる。
白と水色の縞模様が露になる。杏は驚いてばたばたと暴れる。
「嫌! ちょっと何するの」
しかしそんな抵抗は何の意味もなく、幸村は黙って下着に手をかける。
「そんな、やめて!」
下着は膝まで下ろされ、杏の尻はむき出しになった。
あまりのことに、鼓動が加速し、頭は真っ白になった。
部屋の空気が素肌に触れ、羞恥心が一気に高まる。
「いやああ!」
必死に手で隠そうとするが、押さえつけられているためそれはかなわない。幸村はあくまでも淡々と告げる。
「なに、すぐに恥ずかしいなんて言ってられなくなる。残り50回行くぞ」
そして一切の加減もなく、51発目が振り下ろされた。
「ひいっ」
既に真っ赤になっていた尻に、くっきりと手形が残る。守るものが何もない状態での一撃は、先ほどまでよりも一層強い痛みを与えた。
「ごめんなさい! もう許して!」
半ば絶叫するように許しを乞う。しかし、当然聞き入れられるわけもない。
無言の幸村は、機械のように回数を重ねる。
杏の尻は見る見るうちに赤みを増していき、70回を超えると、ペンキでもぶちまけたかのような有様になっていた。
「どうだ。何か言うことはあるか」
幸村は一旦手を止め、尋ねる。
既に生徒たちはみんな帰った後だ。杏がしゃくりあげる音だけが室内に響く。
「……せ、先生。あたし……」
「ああ」
「ごめんなさい。もうバイク通学しません。嘘もつきません……」
「……そうか。じゃあ、あと30発我慢しなさい。それで終わりだ」
「はい……」
幸村の諭すような口調に、杏は素直にうなずく。
抵抗する気力もなくなり、すっかり反省しきっていた。
それからの残り30発も、杏は泣き叫び続けた。優しい口調の幸村だったが、その手には相変わらず一切の加減がなかったのだ。
100発目が終わった後も、杏はしばらく泣き続けた。
腕の拘束も解かれて自由になっても下着を穿き直さず、むき出しの尻を恥ずかしがる余裕もなく、ただ嗚咽交じりに謝罪した。
「ごめんなさい。あたし、もう」
「ああ。これだけやれば、十分だろう。ちゃんと謝れたし、今日はもう帰りなさい」
「はい……先生、ありがとうございました」
ようやく立ち上がった杏は、服装を整えて深々とお辞儀した。そして鼻を啜り、涙を拭いながら扉を開け、生徒指導室を後にした。