続きみたいなもの。
それじゃ、これを深爪先生(モグラ先生の本名)のところに持っていって」
「は、はい……」
「あ、くれぐれも気をつけるんだよ。粗相のない様にね」
先生はそう言い残し去っていった。
すべての責任を私に押し付けて……
私の名前は氏海美(うじうみ)。この私立制裁高校に通う普通の17歳。
でも今日だけは突然職員室に呼び出され、とんでもない大役を言い渡された不幸な17歳。
何故こんな事をしなければならなくなったのか。
それはこの制裁高校の決めたルールと、私の運のなさが原因だった。
次の文から説明です。どうぞ。
モグラ先生には誰だって近づきたくない。
誰も逆らえない上に、世界を震撼させるほどに理不尽な発想の持ち主だからだ。進んで歩み寄る事なんてどんな馬鹿でも絶対にしない。
そこで制裁高校では、モグラ先生に関係するすべての雑用を抽選で決定しているのだ。
先生も生徒も、理事長でさえもこの地獄への片道切符を手にしたら断ることは出来ない。まさにガチンコ抽選会である。説明終わり。
そして今回、モグラ先生に好物のプリン丼を渡す役目を与えられたのが私だったのです。
ホントついてない……
モグラ先生の職員室、通称『モグラの穴』の前。
海美は震える足を抑え、片手にプリン丼を持ちながら目の前の戸を叩いた。
「せ、先生、プリン丼を持ってきました」
部屋の中から甲高い声が聞こえてきた。
「入れ」
(意外とすんなり入れた……これなら無傷で帰れるかも!?)
そんな甘いことを考えながら戸を開けた海美の目の前には、思わず「ここ何次元?」と疑問を持ちたくなる光景が広がっていた。
おびただしい数のネギ。そしてモグラ。
およそ10畳の部屋のほぼ全域をその二つが占拠していた。
そして部屋の中央にはモグラ先生。座り込んで何かをしている。
……5秒ほど、すべてを忘れて室内を見渡していた。それほどまでに圧倒的な光景だった。
(あっ、しまった。何か言わないと)
そう思い、海美は咄嗟に出た言葉をそのまま吐き出した。
「し、失礼します!」
その声に気づき、モグラ先生が海美の方に振り向いた。
そして一言、
「うるせぇぞ!」
「ええ!?」
驚愕する海実を無視し、モグラ先生は続けた。
「俺は今、ドラクエやってんだろーがっ!」
よく見たら、確かにドラクエをしていた。
しかし海美は、周りが強烈過ぎてTV画面が視界に入らなかったのだ。
「ドラクエタイムの俺に話しかけるとは、この時代にも無謀な戦士はいるもんだな。見直したぜ……お前、ひょっとして……」
(あれ、怒ってない? もしかして助かるの)
しかしそれは、一瞬で裏切られた。
「おしおき志望者だな。いやそうだ、そうじゃないとは言わせねぇ! うおおお!凄まじくドメスティックバイオレンスな気分だぜー!!」
(死んだ……)
全てをあきらめた海美は気がついたら部屋の隅に立たされていた。もちろん下半身には何も穿いていない。
「打つぜ打つぜ! 少年時代に戻ってモグラ打ちまくるんだい! やっほう!」
長ネギを片手に叫ぶモグラ先生。アドレナリンMAX状態だ。
「ビュンッ」
ネギで打ったとは思えないスピードでモグラが飛んだ。
モグラ先生は自分の口で「ビュンッ」と言うほどにご機嫌だ。
「ズガス!!」
海美のお尻にモグラがぶち当たった。信じられない程の痛み。
一方のモグラ先生は「ズガス!」と言うと同時に我流のガッツポーズをキメた。
――10発目。
「ウグッ」
呻き声を上げる海美とは対照的に、モグラ先生は大事なドラクエを叩き割るほどに興奮していた。
――20発目。
「いやー! 痛い」
「チュドン!」
叫ぶ海美。そして、取って置きの一発芸『掃除機爆破』を披露するモグラ先生。
――30発目
「っ・・・・!」
声にならない声を出してみたモグラ先生。
そして40発目、ついに地獄の終焉が訪れた。
「出ていけ、この非国民が!」
突然の激怒。謎の罵声。
訳も分からないまま海美は部屋を追い出された。空になったプリン丼の器と共に。
1分程呆然としたら、海美は腫れ上がった尻を押さえながら帰る準備を始めた。
「あれ? 何これ」
尻に妙な違和感。よく見るとネギがささっていた。
「な、何のつもり、あのおっさん!? って言うかいつの間に」
しかし海美はすぐに気づいた。
「モグラ先生は何も穿いてない私が風邪をひかないようにネギをさしてくれたんだ」
意外な優しさに感動する海美。涙をぬぐいネギを抜き取った。
「あ、なんか書いてある」
ネギに書かれていた言葉、それは
『HAPPY BIRTHDAY』
「せ、先生……私の誕生日、7ヶ月も前に祝ってくれたんだ」
痛みと感動でまた涙が溢れ出した。
海美は思わず叫んだ。
「モグラー! フォーエバーIN名古屋!
一方モグラ先生は、ドラクエを割った犯人を捜していたのであった……
それじゃ、これを深爪先生(モグラ先生の本名)のところに持っていって」
「は、はい……」
「あ、くれぐれも気をつけるんだよ。粗相のない様にね」
先生はそう言い残し去っていった。
すべての責任を私に押し付けて……
私の名前は氏海美(うじうみ)。この私立制裁高校に通う普通の17歳。
でも今日だけは突然職員室に呼び出され、とんでもない大役を言い渡された不幸な17歳。
何故こんな事をしなければならなくなったのか。
それはこの制裁高校の決めたルールと、私の運のなさが原因だった。
次の文から説明です。どうぞ。
モグラ先生には誰だって近づきたくない。
誰も逆らえない上に、世界を震撼させるほどに理不尽な発想の持ち主だからだ。進んで歩み寄る事なんてどんな馬鹿でも絶対にしない。
そこで制裁高校では、モグラ先生に関係するすべての雑用を抽選で決定しているのだ。
先生も生徒も、理事長でさえもこの地獄への片道切符を手にしたら断ることは出来ない。まさにガチンコ抽選会である。説明終わり。
そして今回、モグラ先生に好物のプリン丼を渡す役目を与えられたのが私だったのです。
ホントついてない……
モグラ先生の職員室、通称『モグラの穴』の前。
海美は震える足を抑え、片手にプリン丼を持ちながら目の前の戸を叩いた。
「せ、先生、プリン丼を持ってきました」
部屋の中から甲高い声が聞こえてきた。
「入れ」
(意外とすんなり入れた……これなら無傷で帰れるかも!?)
そんな甘いことを考えながら戸を開けた海美の目の前には、思わず「ここ何次元?」と疑問を持ちたくなる光景が広がっていた。
おびただしい数のネギ。そしてモグラ。
およそ10畳の部屋のほぼ全域をその二つが占拠していた。
そして部屋の中央にはモグラ先生。座り込んで何かをしている。
……5秒ほど、すべてを忘れて室内を見渡していた。それほどまでに圧倒的な光景だった。
(あっ、しまった。何か言わないと)
そう思い、海美は咄嗟に出た言葉をそのまま吐き出した。
「し、失礼します!」
その声に気づき、モグラ先生が海美の方に振り向いた。
そして一言、
「うるせぇぞ!」
「ええ!?」
驚愕する海実を無視し、モグラ先生は続けた。
「俺は今、ドラクエやってんだろーがっ!」
よく見たら、確かにドラクエをしていた。
しかし海美は、周りが強烈過ぎてTV画面が視界に入らなかったのだ。
「ドラクエタイムの俺に話しかけるとは、この時代にも無謀な戦士はいるもんだな。見直したぜ……お前、ひょっとして……」
(あれ、怒ってない? もしかして助かるの)
しかしそれは、一瞬で裏切られた。
「おしおき志望者だな。いやそうだ、そうじゃないとは言わせねぇ! うおおお!凄まじくドメスティックバイオレンスな気分だぜー!!」
(死んだ……)
全てをあきらめた海美は気がついたら部屋の隅に立たされていた。もちろん下半身には何も穿いていない。
「打つぜ打つぜ! 少年時代に戻ってモグラ打ちまくるんだい! やっほう!」
長ネギを片手に叫ぶモグラ先生。アドレナリンMAX状態だ。
「ビュンッ」
ネギで打ったとは思えないスピードでモグラが飛んだ。
モグラ先生は自分の口で「ビュンッ」と言うほどにご機嫌だ。
「ズガス!!」
海美のお尻にモグラがぶち当たった。信じられない程の痛み。
一方のモグラ先生は「ズガス!」と言うと同時に我流のガッツポーズをキメた。
――10発目。
「ウグッ」
呻き声を上げる海美とは対照的に、モグラ先生は大事なドラクエを叩き割るほどに興奮していた。
――20発目。
「いやー! 痛い」
「チュドン!」
叫ぶ海美。そして、取って置きの一発芸『掃除機爆破』を披露するモグラ先生。
――30発目
「っ・・・・!」
声にならない声を出してみたモグラ先生。
そして40発目、ついに地獄の終焉が訪れた。
「出ていけ、この非国民が!」
突然の激怒。謎の罵声。
訳も分からないまま海美は部屋を追い出された。空になったプリン丼の器と共に。
1分程呆然としたら、海美は腫れ上がった尻を押さえながら帰る準備を始めた。
「あれ? 何これ」
尻に妙な違和感。よく見るとネギがささっていた。
「な、何のつもり、あのおっさん!? って言うかいつの間に」
しかし海美はすぐに気づいた。
「モグラ先生は何も穿いてない私が風邪をひかないようにネギをさしてくれたんだ」
意外な優しさに感動する海美。涙をぬぐいネギを抜き取った。
「あ、なんか書いてある」
ネギに書かれていた言葉、それは
『HAPPY BIRTHDAY』
「せ、先生……私の誕生日、7ヶ月も前に祝ってくれたんだ」
痛みと感動でまた涙が溢れ出した。
海美は思わず叫んだ。
「モグラー! フォーエバーIN名古屋!
一方モグラ先生は、ドラクエを割った犯人を捜していたのであった……
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